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文字ブログ

文字(書体、フォント、タイポグラフィ、活字、活版印刷)についてど素人が学習した結果をまとめるブログです。デザイン初学者(本業ITエンジニア)なので、誤り、偏見、言い過ぎ等多々あるかと思いますが、 よろしければコメントにてご指摘いただけると幸いです。

2つの特徴から迫るリオオリンピック・フォント(Rio 2016 font)

※(お詫び)著作権がなんとなく怖くて写真を載せていませんが、確認をとって載せられる写真は載せたいと思います。
気になる方は「参考」に挙げたリンクで実際にフォントを見てみてくださいね。

リオオリンピックも折り返し地点、日本チームのメダルラッシュも話題になっていますが、フォント好きにとって気になるのは選手のゼッケンに描かれた大胆で個性的なフォント。
この大胆で個性的なフォント「Rio 2016 font」について2つの特徴からせまってみます。

特徴1. ロゴを元に作られたフォント

ロゴができてから約18ヶ月後にフォント作成が進められます。
デザイナーのDalton Maagは言います。

フォントはロゴの正確なレプリカであること、ということが指示でした。

これ、IT業界でいう「リバース・エンジニアリング」ってやつかもしれません。
ただ、Rio2016は素晴らしいロゴであるけど、統一的なフォントにするには個性的…
Dalton Maagは続けます。

ロゴとフォントの違い、ロゴは文字の組み合わせは決まってる。
でも、フォントでは、次にどんな文字が来てもいい感じにマッチするようにならなきゃならない。
ロゴでは'R'とか'2'はすごい流動的だけど、'1'はとても直線的、そして、'o'は傾斜がついてる。
これらを調和的なシステムとして働くようなバランスを見つけることが、最大のチャレンジでした。

彼らは23(!)ものフォントのコンセプトを考え、「情熱的」に比較し、また文字同士のバランスを取るため文字やリガチャを様々に「変形」するといったあらゆる工夫を重ねたようです。
まさにエンブレムのコンセプトと同じ「Passion」と「Transformation」という2つのコンセプトから作業が進められました。

特徴2. 街、人々、アスリートから着想された文字

今回のフォントで一番面白い! と思ったのは、いくつかの文字はリオの街や人々、競技に打ち込むアスリートが着想元になっていることです。

2020年の東京オリンピックでもこの発想でフォントが作られたら面白いなぁ、と思います。
東京タワーを形どった'A'とかシン・ゴジラを形どった文字とか、妄想はつきません…(笑)

参考

99u.com rio2016olympicswiki.com

「妄想欧文書体図鑑」はじめます

御判りのように、私は、この啓蒙の時代にあってなおあえて次のように告白する程に途方もない人間です。即ち、我々は一般に無教育な感情の持ち主であって、我々の古い偏見を捨て去るどころかそれを大いに慈しんでいること、また、己が恥の上塗りでしょうが、それを偏見なるが故に慈しんでいること、しかもその偏見がより永続したものであり、より公汎に普及したものであればある程慈しむこと、等々です。(エドマンド・バーク中野好之訳)『フランス革命についての省察』)

ブログの新企画として「妄想欧文書体図鑑」シリーズをはじめます。

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※予定参考文献のひとつ『26 Letters Lettern Lettres: An Annual and Calendar 1989』。とても美しい本ですが、惜しむらくはドイツ語で文章が全然わからないこと…

企画の説明として、この企画をはじめようと思った2つの言葉をご紹介します。

ひとつめは活版工房にも所属する活字職人S氏が、ワークショップで参加者に「コンピュータの文字と比べて活字の良さは?」と訊かれた際にかならず答えるこの言葉。

コンピュータの文字はみんなキレイだけど画一的。 けれど、街を歩いていて美人ばかりじゃつまらないでしょ? その点、活字の文字は不揃いかもしれないけど個性的で味わい深い。

そして自分はこの説明は「書体」にもそのままあてはまるなぁ、と聞くたびに感じていました。 代表的な欧文書体はどれも美しくかつ個性的で百花繚乱、そして、その美しさと個性は「人」に例えることができるから。

ふたつ目は先週パラパラめくっていた『タイポグラフィ (デザインの現場BOOK)』の記事より、インタビュアーに「書体の違いを覚えるようためには?」と訊かれたブックデザイナー祖父江慎氏が答える言葉。

細部に注目するような見方を、いったん忘れて、文字そのものをストレートに味わえるようになると、もっと楽しくなってくるんですよ。

この2つの言葉から思いついたのが、書体の擬人化です。

セリフやサンセリフのような種類が同じ欧文書体は一見、どれも似ています。

同じサンセリフHelveticaとUniverseを見分けるのは私たち素人にとっては、蟻の行列を眺めてこのアリさんは雄か雌のどっち? を答えるくらい難しい(デザイナーさんや書体ファンは除く)。

そこで、欧文書体を有名人やキャラクターにたとえてイメージをつかむことで、その後の細部の説明が頭に入りやすくなったり、親近感がわいて書体の違いを覚えやすくなったりと、楽しく学習することができるのでは? と考えました。

ちなみに当初は今流行りのプログラミング擬人化のように欧文書体を「萌え美少女キャラ」化したいと思っていたのですが(優等生で人気者のヘルベチカちゃん、古風なお嬢様のパラチノちゃん、クールでツンデレのフーツラちゃんとかetc.)、自分の絵心スキルのあまりの無さを始めとする諸般の事情によりあえなく断念…

結果誤ったイメージを押しつけたり書体のイメージを矮小化してしまう恐れも多々あると思いますので、リスクとメリットを見極めつつ、慎重にやってゆきます。

乞うご期待!

楽しく学ぶ(?)文字組編

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週一で更新を目指すこのブログ、今回は
タイポグラフィ05 楽しく学ぶ文字入門』
第1特集「楽しく学ぶ文字入門」より、「CHAPTER 2 TYPE SETTINGS 文字組編」をざっくりまとめます。

文字組とは?

組版(くみはん)とは、印刷の一工程で、文字や図版などの要素を配置し、紙面を構成すること。組み付けとも言う。本来は活版印刷の用語で、文字通り版を物理的に組むこと、活字を並べて結束糸で縛ったものを「組み版」と呼んだことに由来する。(Wikipedia)

まとめ

01. サイズを表す単位、ポイントと級ってどう違うの?
  • ポイント(pt) : 金属活字のころから使われている単位で「インチ」が基準。IllustratorInDesignで利用
  • 級 : 日本独自の単位で紙を媒体としたデザインでよく使われている

上記二つとも物理制約があったときの単位で今や単位としての意味はあれど大きさに意味はない。

02. きれいに見える組み方のコツは?

まずは「文字情報を整理する」「優先順位を組み立てる」「距離/目の動き/見せる/読ませる」を整理して下を検討する。

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1. 書体の選び方
 「見せる」場合と「読ませる」場合を考慮して選ぶ。
2. 文字の大きさとウェイト
3. 大きさの考え方
 やみくもに変化をつけるのではなく同じ差を持つ数字(3-6-9-12-15...など)をもとに文字サイズを決定する「等倍」や、同じ比率を持つ数字(3-6-12-24-48…など)をもとに文字サイズを決定する「等差」などを軸に検討するのがよい。
4. 空間への配慮
 間(アキ)が狭すぎたり広すぎたりすると文字や文字列がその姿を失いがちになり、内容が伝わりにくくなる。「見せる」ものはまとまりを「読ませる」ものはベタ組(左)を基準にすることが一般的。

03. してしまいがちな文字組の落とし穴って?

1. 詰めすぎ
2. 行長(1行の長さ)の決め方がいい加減
3. 記号の使い方

 “横組”はダブルコーテーションで囲み、
 〝
 縦
 組
 〟
 はダブルミニュートで囲むなど正しく記号を使うこと。
 (って、ダブルミニュートって知ってました?)
4. 禁則処理していない
 禁則処理とは、例えば文頭の「、」を避けるような処理のこと。
5. 混在防止と縦組対策

04. 和欧混植で注意することは?

1. 内容の確認
 明朝体ならセリフ、ゴシック体ならサンセリフを選ぶのが一般的。
 さらに和文がオールドスタイルかオールドローマンかや書体の時代性で考えてみるのもよい。
2. 使用用途
3. 和欧の大きさの調整
 欧文と和文を比べると欧文は数値では同じでも見た目は少し小さめに見えるので欧文を平均で5〜10%程度大きくする。
4. 和欧の重心の調整
 大きさを調整したら和文と欧文で重心をそろえる必要もある。その場合は「国」などの上下に水平線がある文字を基準にするとわかりやすい。

05. 欧文をきれいに組むには?

 くわしくは『欧文タイポグラフィの基本』を読んでくださいとのこと。

06. 欧文組版で気をつけるべきポイントは?

1. 大文字だけで文章を組まない!
2. イタリックを正しく使おう
3. 数値だけで位置をあわせない
4. スモールキャップを使おう
5. 2種類の数字を使い分ける
6. ハイフンを使おう
7. 組版の中に白いスジが出ないように!
8. きちんとインデントをしよう
9. 約物を正しく使おう
10. スクリプトは大文字だけで組まない
11. 行末がガタガタにならないように
12. 合字を使おう

感想

このチャプタを読んでわかったことは書体や組版はようするに「伝えたい内容」を「十分に伝える」ためのものであり「主役ではない」ということです。

読み手に中身よりまず文字そのものに意識を向けられたらそれがたとえ良い意味ででも「失敗」かも。
読み手に文章を気持ち良く読まれ、内容が十分伝わってる。そして読み手はそこで利用されている書体や組版なんか気にとめもしない(実際そうだし)。
それが、正解。
あくまで書体や組版は縁の下の力持ちであって、主役ではないのです。

では主役じゃないからといって書体や組版は重要ではないか、ということでは全然なく、むしろ書体や組版をちょっとでも間違うと伝えたいことの半分も伝えられなかったり、逆にちょっと工夫すると飛躍的に伝わりやすくなったりする。

伝えたいことってやっぱり十分に伝えたいじゃないですか、そしてできれば心地よく。

なので書体や組版を学ぶのはむしろ万人に意味あるんですよ!(って後半次第にエモーショナルになったのはこれを書くのに1時間以上使った自分を慰めるためでもあります…)

『The Helvetica Book』(大谷 秀映著)まとめとヘルベチカ入門

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ヘルベチカとは

この本は「ヘルベチカ」についてあらゆる角度から書かれた本であり、ヘルベチカとは世界でもっとも有名な書体です。 そして実家の活版印刷所が(おそらく)日本で初めてドイツから活字を輸入した書体でもあります。
商品のパッケージ、各種交通機関の案内標識、生きていると目にしない日はない、と言えるくらいありとあらゆる場面で使われ、さらにBMWNTTデータパナソニックなど大手企業のコーポレート・タイプとしてもガンガン使われているのも有名です。
(個人的に意外だったことにiOS8までのデフォルトフォントでもあります)

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さてこの本、鮮烈なオレンジのカバー、コンパクトな長方形のフォルム、「ヘルベチカ」の響き

「かっけー!」

ヴィレヴァンあたりで手にとったボーイズ&ガールズはChapter 00のグラビアページで読むのをやめてしまったのではないか、と思わずそんな余計な心配にかられる本でした。

内容

というのもChapter 01からはガチ・ガチガチ・超ガチな記述が続くからです。
以下、当書のIndexをあげます。

  • Chapter00 ヘルベチカのタイポグラフィ、イメージ写真
  • Chapter01 ヘルベチカストーリー、活字見本
  • Chapter02 サンセリフの歴史と種類、ヘルベチカのライバル書体
  • Chapter03 タイプフェイス用語解説、ライバル書体との比較
  • Chapter04 デザイナーズTips、ヘルベチカのオススメ書籍紹介

なぜガチなのかといえば、とにかくこんなコンパクトで薄い本に関わらず記述の細かさ、情報量が圧倒的だから!

たとえばヘルベチカストーリーでは前身のノイエ・ハース・グロテスク〜ヘルベチカ〜ノイエ・ヘルベチカ〜ライノタイプのデジタルフォントまでの歴史と網羅的な見本帳(!)が差し込まれ、ヘルベチカとノイエ・ヘルベチカの違いがまとめられています。
またタイプフェイス用語解説では、ストロークやステム、エックス・ハイトといった基本用語に加えボウル、イアー、スパーなど聞いたこともないような専門用語がこれでもかと(正直かの『欧文書体』シリーズよりも細かい…)。
そしてライバル書体との比較ではヘルベチカ・アクチデンツグロテスク・ユニバースという3種類の類似フォントの比較を全アルファベット(大小文字)および全数字でするという丁寧さ!
(「いくらみても大文字のDとXの違いがわからね〜」)

誰向きの本か

おしゃれで取っつきやすい外観とは裏腹に初心者ではなく、実は中級者以降(もしくはプロ向き)なのではないか、と思います。文字を仕事にするならばインデックスとして手元に置いておくと便利な一冊と感じました。
ヘルベチカっておしゃれ! 書体をお手軽に知りたい! ってなんとなーく買う人はいずれ紹介する『欧文書体』を買ったほうがよいと思います(もちろんグラビアページは美しくそれだけで読む価値は十分にありますが)。

まとめ

なぜこれほどまでにヘルベチカが有名になり世界を席巻したか?

ど素人としてざくっと直感と印象で言えば

ヘルベチカが近代と現代、有機と無機、アナログとデジタル、暖かさと冷たさの絶妙な中間点にある書体だからと思います。

だからありとあらゆるシーンで利用される、使いやすい。悪く言えばどっちつかず、中途半端(正直個人的にはそれほど好きな書体ではありません)。

といろいろ語ってきましたが、ヘルベチカは文字を学ぶひとにとっても個人的にもとても大切な書体なので、今後も折に触れて書いていこうと思います。家には『ヘルベチカ ~世界を魅了する書』のDVDもあるので、こちらの感想もいずれレポートしたいと思います。

空港の書体(成田〜デンパサール)

一昨日まで旅行でバリに行ってきました。

さて、文字を学習すると気になるのが空港で利用されている書体ですよね。

…ですよね?

というのも空港は様々な年齢・国籍の方々が利用し、かつ表示する情報がとても多い場所です。 ですので遠くから見ても視認性の高い書体が求められる、言い換えれば、書体がとても重要な場所であるからです。
たとえば有名なサンセリフ書体の一つ「フルティガー(Frutiger)」は1968年、シャルル・ド・ゴール空港の案内標識の依頼から生まれた書体です。

ということで成田空港の書体はフルティガーかなと思いつつ、調べてみると「ヘルベチカ(Helvetica)」でした。

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いまだにほとんどの文字でフルティガーとヘルベチカの見分けがつきませんが、小文字のaの末尾のくるんとしたところ(専門用語でターミナル)をみるとあぁヘルベチカってわかります。なんとなーく撮った写真の大文字のGのターミナルもヘルベチカらしい部分ですね。
ちなみに昨年開館した第3ターミナルは「ノイエ・フルティガー(Neue Frutiger)」が利用されています。

さて肝心のバリ・デンパサール空港ですが標識を撮影しようとした瞬間、いかつい監視員に「No Photo!」と怒鳴られ撮れませんでしたごめんなさい…

『ノンデザイナーズ・デザインブック』[活字でデザインする]まとめ(前編)

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この本の後半では、活字に特化して説明します。活字はデザインのすべてだからです。そうですよね?

デザイン初学者ならまずこの一冊! と呼ばれていたので読みました。
この本がプロの方にとってどれだけ正確なものかはわかりませんが、初心者でもわかりやすいようひたすら論理的に書かれていたため、ぼくにとっては恐怖と羨望に彩られたデザインという漠然とした雲(イメージ)からはっきりとした全体像が浮かび上がったので良い入門書と感じました。

素晴らしいことにこの本の後半は[活字でデザインする]というセクションであるため、
前後編に分けてざっくりまとめてゆきます。

扉にはこんなことが書いてあります。

  1. 活字はデザインのすべて
  2. 目的はコミュニケーション

活字を利用したデザインは「強調」、「コントラスト」、「衝突」に大別される。

  1. 協調(△): 1種類の書体を利用したデザイン。ときに「落ち着いて静かで格式ある雰囲気」になるが、ときには「ただただ退屈」になる
  2. コントラスト(◯): はっきりと異なる書体や要素の組み合わせ。伝えたいことを適切に強調することであり、デザインの目的のコミュニケーションにかなう
  3. 衝突(×): 似ている書体の組み合わせ。ぼやけたデザインになり、見ている側は無意識で混乱し不快になり、なにより伝えたいことが伝わらない

ただし、活字について理解しないと「コントラスト」は「衝突」に堕ちる。
そのためには「コントラスト」に「名前をつけ」てテクニックとして使いこなせるようにすることが大切。
そのうえで「臆病になるな!」ということが大切。